基礎理論研究センター 【名古屋大学 素粒子宇宙起源研究機構(KMI)】

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弦理論・数理構造部門

自然界には4つの基本的な力(電磁気力、強い力、弱い力、重力)が存在することが知られています。このうち重力を除く3つの力についてはゲージ場の量子論を用いて標準理論が構築され、多くの実験事実が統一的に説明できるようになりました。一方、重力理論は古典論の範囲では一般相対性理論で非常によく記述できますが、ゲージ場の量子論とうまく整合しないことが問題とされています。弦理論は重力子を含めたあらゆる素粒子を、弦のさまざまな振動モードと見なすことによって、この問題を解決しようとする理論です。自然界に存在する基本的な力の無矛盾な統一理論を構築することは、物質の根源・宇宙の起源が何であるかという問いを追求するうえで重要な課題ですが、現在、弦理論はそのような統一理論の最有力候補と位置づけられています。

弦理論は 1960 年代末にハドロン(核子や中間子の総称)に関する物理現象を説明する目的で提案されました。現在ではハドロンの物理は、量子色力学(QCD)と呼ばれるゲージ理論で記述されることが分かっていますが、70 年代中頃に重力子を記述できることが発見されたことで、弦理論は統一理論の候補と考えられるようになりました。80年代以降になると、共形場理論、ミラー対称性、D ブレインなどのアイデアを通して物理学者のみならず数学者をも巻き込み目覚ましい研究成果が得られました。それにもかかわらず、現在、弦理論から標準模型を正確に再現することは非常に困難です。その理由は弦理論のもつあまりに豊かな数理構造に対する理解がまだ十分ではないためだと考えられます。

弦理論の近年の発展の中で、本部門が取り組んでいるのはゲージ理論・弦理論対応です。これはゲージ理論と(重力理論を含む)弦理論という一見異なる2つの理論が、実は等価であるという驚くべき主張です。この対応は統一理論という観点からも注目すべきものですが、それのみならず、この対応を用いて、これまで計算が極めて困難であった物理量を簡単に求められることが分かり大きな興味を呼び起こしました。関連して本部門が進めているプロジェクトの一つはハドロン物理への適用です。ゲージ理論・弦理論対応を用いてQCDの性質をほぼ実現するモデルが構築され、ゲージ理論・弦理論対応がハドロン物理の理解にも非常に有用であることが確かめられました。このモデルを用いたハドロン物理のさらなる解明、またモデルをより現実のQCDに近づけるための改良などをプロジェクトの目標としています。一方、ゲージ理論・弦理論対応は数学的に予想もできない等式を生み出すことからも注目されます。本部門では弦理論のもつ数理構造としてゲージ理論・弦理論対応を無限可積分系や量子幾何不変量と関係づけて研究を展開しています。また弦理論の豊かな数理構造を明らかにすることを目指して光円錐型弦の場の理論の一般化、ヘテロ弦のオービフォルドコンパクト化の研究も行っています。

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