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【研究成果】世界最高エネルギーの衝突型加速器 LHC にてニュートリノ反応候補を初めて観測 – ニュートリノ実験の新しい視点 –

2021.11.29

 

LHC にて原子核乾板検出器が捉えた高エネルギーニュートリノ反応2例。左:検出器横からの図、 右:検出器下流からの図。 
原子核乾板と交互に積層された鉛板、またはタングステン板標的でのニュートリノ反応にて生成された粒子の原子核乾板で捉えた飛跡の表示。

KMIの中野敏行講師・中村光廣教授・六條宏紀特任助教・佐藤修特任講師が参加する国際共同実験 ForwArd Search ExpeRiment at the LHC(FASER、フェイザー) が、史上初めて世界最大最高エネルギーの衝突型加速器 LHC からのニュートリノ反応候補の観測に成功しました。

実験チームは今回、欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロンコライダー (LHC)のビーム軸上にて、2018 年に小型のニュートリノ検出器を設置してデータを取得しました。高飛跡密度での飛跡再構成アルゴリズム等の技術開発によりLHCビームからの膨大な背景事象を処理し、数少ないニュートリノ反応候補の探索を行いました。さらに、粒子の角度情報など幾何学的パラメータを用いた多変数解析により背景事象の分別を行い、LHC におけるニュートリノ反応候補の初検出を実現しました。

本成果により、ニュートリの研究においてFASER国際共同実験が確かに有用であると示され、今後のTeVスケールのニュートリノの研究の成果が期待されます。今回の成果には、名古屋大学F研が開発した原子核乾板技術が使用されており、どこにでも置けるコンパクトかつそれ自身では電源不要の検出器としての原子核乾板技術の機動力の高さが際立っています。

本研究成果は、2021 年11月24日(EST)に米国科学雑誌「Physical Review D」に掲載されました。詳しくは、プレスリリース(本文)をご覧ください。

左図:ビーム上流から見た原子核乾板検出器。1mm 厚の鉛板と原子核乾板フィルムを交互に積層したもの(左図:左)重量14㎏と0.5mm 厚のタングステン板と原子核乾板フィルムを交互に積層したもの(左図:右)重量約15kgの検出器を並べて設置。それぞれ一辺が約20㎝の直方体形状。
右図 : 横から見た概念図。

人類未踏の地には、新発見の可能性が大いにあります。
今回のニュートリノ反応候補の検出により高エネルギーの未探索・未観測領域(サブTeV~TeV)でのニュートリ反応解析の扉を開きました。
今後、2022-2024及以降で計画しているFASER 実験の詳細解析でどのような結果が出てくるか楽しみです。
このニュートリノ反応検出・解析において名古屋大学の原子核乾板技術が活躍しています。佐藤修特任講師

 

論文情報

雑誌名: Physical Review D 
タイトル: First neutrino interaction candidates at the LHC
著者名: Akitaka Ariga, Tomoko Ariga, Tomohiro Inada, Mitsuhiro Nakamura, Toshiyuki Nakano, Hidetoshi Otono, Hiroki Rokujo, Osamu Sato, Yosuke Takubo, et al. 全75名(アルファベット順)
DOI: 10.1103/PhysRevD.104.091101