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【研究成果】暗黒物質探索の新しい窓を開く 〜 Belle II 実験が最初の物理結果を発表 〜

2020.04.07
Belle II 実験でのZ’ボソンの生成と崩壊の様子を示すコンピュータグラフィクス画像(シミュレーション)。電子と陽電子の衝突によって、二つのミューオン(緑色の線と検出器のヒット点)とともにZ’ボゾンが生成され、即座に“見えない粒子”に崩壊している。この図では、Z’ボゾンはニュートリノと反ニュートリノに崩壊しているが、暗黒物質粒子とその反粒子に崩壊する場合もある。(C) KEK, Belle II. Zachary Duer, Tanner Upthegrove, Leo Piilonen, George Glasson, W. Jesse Barber, Samantha Spytek, Christopher Dobson(Virginia Tech Institute for Creativity, Arts and Technology, Virginia Tech Department of Physics, Virginia Tech School of Education)によって開発されたVRソフトを使って作成。

 

Belle II 国際共同実験の最初の物理結果が、Physical Review Letters 誌に発表されました。この成果は、宇宙の物質の85%を占めるとされる暗黒物質の探索に新しい糸口を与えるものとして注目され同誌の「Editors’ Suggestions」に選ばれました。

今回の成果は、SuperKEKB電子-陽電子衝突加速器で行われているBelle II実験において、「Z’ボゾン」と呼ばれる通常の物質と暗黒物質をつなぐ役割をする仮説上の新粒子を探索したものです。このBelle II実験初の物理結果として発表した論文では、KEKの電子-陽電子衝突加速器「SuperKEKB」を使って2018年に取得した初期データの解析結果を報告しました。現時点ではZ’ボゾンの信号は得られませんでしたが、その性質に重要な制限をつけることに成功しています。

 

Belle II 実験には、KMIから、飯嶋徹教授(Belle II 実験の代表であるSpokesperson)、Alessandro Gaz特任准教授(物理解析をリードするPhysics Coordinator)、加藤悠司特任助教、松岡広大特任准教授、周啓東特任助教が参加しています。飯嶋教授率いる名古屋大学の研究チームは「TOPカウンター」と呼ばれる新型粒子検出器の独自開発と建設・運転、KMの高性能コンピュータシステムによる大量のデータを処理手法の開発、新現象発見に向けたデータ解析など、プロジェクトの様々な側面で主導的な役割を担っています。

今回の論文は、Belle II実験が他の実験でカバーされていない領域の暗黒物質を探索できることを示しました。
今はまだ、この探索の入り口にいるという段階ですが、これからデータをさらに蓄積することで、より重要な結果を提供できるようになります。
とにかくもっとデータが欲しいです!(飯嶋徹教授)

Belle II の2018年時点の少ないデータセットだけでも、暗黒物質の性質に関する興味深い結果を得ることができたことは注目に値することです。もちろん、これは「前菜」に過ぎません。より大きなサンプルとより洗練された解析手法を使った、もっと刺激的な結果がこれからどんどん出てきます。(Alessandro Gaz特任准教授

 

詳しい発表内容については、KEKのプレスリリースをご覧ください。

https://www.kek.jp/ja/newsroom/2020/04/07/0000/

 

論文情報

“Search for Search for an Invisibly Decaying Z’Boson at Belle II in e+ e→μ+μ(e±μ)Plus Missing Energy Final States”
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.124.141801

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