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寺田隆広さんが2025年度(第20回)中村誠太郎賞を受賞しました

2025.10.10
ニュース / トピックス
受賞

名古屋大学素粒子宇宙起源研究所(KMI)の特任助教の寺田隆広さんが、素粒子奨学会の2025年度(第20回)中村誠太郎賞を受賞しました。受賞論文は「曲率ゆらぎから誘起される重力波スペクトルの半解析的計算」(国立天文台・教授の郡和範さんとの共著論文 Phys. Rev. D 97, 123532 (2018) に基づく書き下ろし論文)で、宇宙に存在する「誘導重力波」を効率よく計算する公式を導出した功績が評価されました。

重力波とは?

重力波とは、宇宙空間そのものが波のように伸び縮みする現象です。アインシュタインが100年以上前に存在を予言し、2015年にようやく初めて検出されました。ブラックホール同士の衝突など、宇宙の激しい現象で生まれる「宇宙からのメッセージ」として注目されています。現在は、重力波をプローブとして宇宙初期の状態や、標準理論を超える物理を探索する方法が検討されています。
その中で、誘導重力波(induced gravitational waves)は、宇宙の初期に存在した小さな密度のムラ(密度ゆらぎ)から、ゆらぎ同士の相互作用を通じて二次的に発生する重力波です。

計算のボトルネックとは?

誘導重力波の強さ(パワースペクトル)の計算は多重の積分を必要とし、時間もかかり、数値的な誤差が出やすいという課題がありました。寺田さんたちは、計算量がとくに大きい「時間に依存する成分」に着目し、簡単な式変形を多数回組みあわせることで解析的に解ける形に変換しました。この部分をあらかじめ計算できるようにすることで、計算上のボトルネックを解消しました。この新しい計算手法は、重力波源のパワースペクトルによらず適用できるため、さまざまな研究の場面で活用することができます。

誘導重力波の研究でわかること

数値計算の結果と観測データを比較することで、宇宙初期に生まれた小さなブラックホールの量や大きさを推定したり、当時の宇宙を満たしていた物質の性質を知る手がかりを得たりすることができます。また、電磁波では観測できないほど小さなスケールでの宇宙のゆらぎを調べることで、宇宙が誕生直後に急膨張した「インフレーション」と呼ばれる現象について、新しい手がかりが得られる可能性もあります。
こうした研究を通して、私たちがまだ知らない宇宙の仕組みや、初期宇宙で起きていたさまざまな物理現象の理解が進むことが期待されています。

宇宙重力波観測の未来

最近では、重力波検出器を宇宙空間に打ち上げる計画が進んでいます。地上の検出器では捉えられない、低周波のゆっくりとした重力波を観測できるようになれば、宇宙の歴史がさらに詳しく分かるようになります。寺田さんらの研究は、そうした観測データを正確に解釈するための理論的な基盤を提供しています。
この受賞は、寺田さんの研究が現代の重力波天文学において重要な貢献をしていることを示しており、今後の宇宙の謎解明に向けたさらなる研究発展が期待されます。


受賞者コメント

寺田さんは次のようにコメントしています。

近年の重力波観測の進展に伴い、私の導出した公式が多くの研究で使われており、分野へのインパクトが認められて受賞に至ったのだと受け止めております。
今回の受賞に当たって貴重なお時間を割いてくださった審査員をはじめとする関係者の皆様や、原論文の共著者である郡和範氏に深く感謝いたします。
この賞を励みに、今後も意義のある研究をしていきたいと思います。

なお、授賞式は2026年3月にオンラインで開催される日本物理学会春季大会にて行われる予定です。


中村誠太郎賞について

中村誠太郎賞は、素粒子奨学会が素粒子理論、原子核理論、宇宙論などを含む広義の「素粒子理論分野」における若手研究者の優れた研究成果を表彰する賞です。日本の素粒子論・原子核理論の研究基盤の構築に尽力し、素粒子奨学会を創設した中村誠太郎氏の功績を称えて2006年に設立されました。


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