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2013年ノーベル物理学賞とKMIの研究

2013.10.08
ニュース / トピックス

2013年ノーベル物理学賞がFrançois Englert博士とPeter W. Higgs博士に授与されることが発表されました(2013年10月8日)。おめでとうございます。

受賞理由: 素粒子の質量の起源の理解に貢献した理論的発見と、CERNのLHC-ATLAS/CMS実験で、その理論で予言された素粒子の発見によりその理解が裏付けられたこと。

素粒子の質量を説明するために、Englert博士とHiggs博士によって予言されたヒッグス粒子の存在証拠が、CERN LHCのATLASとCMSの両実験によって遂に捕えられ、2012年7月に発表されたことは記憶に新しいところです。
名古屋大学素粒子宇宙起源研究所(KMI)に所属する研究者は、ATLAS実験の建設と運転、データ解析において活躍し、このヒッグス粒子の発見に大きな貢献を果たしています。
一方、理論的観点からは、発見された粒子の性質やその本性には未だ未解明なところも多く、KMIでは、スーパーコンピューターの駆使と純粋理論的な手法をあわせ、ヒッグス粒子の本性を探る理論的研究を精力的に進めています。
KMIでは今後も、実験と理論の両面から、ヒッグス粒子の性質を解明し、その先にある新しい素粒子世界の探求を目指していきます。
以下に、ヒッグス粒子に関するKMIにおける研究を随時紹介していきます。
[LHC-ATLAS実験]
今回のノーベル賞受賞に深く関わっているLHC-ATLAS実験はスイス・ジュネーブ近郊の欧州原子核研究所でおよそ3000人の研究者によって遂行され、素粒子を検出するための専用の巨大なATLAS検出器(25mx44mx25m)が建設されました。名古屋大学はその中でも特にミューオン検出器(図の中央より右上、緑で示されています)の建設から運転に大きく貢献しています。
ATLAS実験では、ヒッグス粒子発見が大きな目標の1つでした。2011年12月にヒッグス粒子と目される新粒子が存在する予兆(3.5σ)を捉えました。続く2012年7月に新粒子を99.9999%以上(5.9σ)の確度で発見しました。そしてとうとう、今年3月にそれまでの約2.5倍の実験データを用いて、この新粒子の性質を調べたところ、ヒッグス粒子である事を強く示唆する結果を得ました。最新の測定結果は、質量 125.5 ± 0.2 +0.5-0.6 GeV/c2, 標準模型に対する信号の強さは、1.33 ± 0.14 ± 0.15,
スピン‐パリティは 0+(0, 1+, 1, 2+
である可能性は 97.8% の確度で棄却)を強く示唆しています。
また、フェルミ粒子との結合も 99.9999% 以上の確度で間接的に確認されており、
ボソン粒子を媒介した反応も 99.9% (3.3 σ)の確度で観測されています。

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[1] “Measurements of Higgs production and couplings using diboson final
states with the ATLAS detector at the LHC”, ATLAS collaboration, Phys. Lett. B 726 (2013), pp. 88-119
[2] “Evidence for the spin-0 nature of the Higgs boson using ATLAS data”, ATLAS collaboration, Phys. Lett. B 726 (2013), pp. 120-144
[複合ヒッグス模型の数値的研究]
KMI理論グループでは、ヒッグス粒子を強い相互作用をする新種のフェルミオンの複合粒子ととらえる、複合ヒッグス模型の大規模数値計算を行い、素粒子標準模型を超える新しい物理法則の探求を行っています。KMI発足の2010年度に導入された高性能並列計算機システムφを駆使し、複合ヒッグス模型に要求される物理的な性質を満たす理論の探求を行っており、その一部の成果は、2013年4月19日の記事に紹介されています。
標準模型中のQCDがクォークの複合粒子である幾多のハドロンを作り出すように、これらの模型では新種の複合粒子がたくさん存在するはずですが、その典型的な質量はLHC実験で見つかったヒッグス粒子の質量の10倍程度より大きくなります。しかし、ヒッグス粒子に相当する複合粒子だけは、他の複合粒子よりも格段に軽くなりうる事が理論的に予想されています(ウォーキングテクニカラー模型におけるテクニディラトン)。KMIを中心とするグループ(LatKMIコラボレーション)は大規模数値計算による研究により、ヒッグス粒子が軽くなるのと同様の現象がある種の模型で起こることを確認しました。その結果は Physical Review Letter 紙に近く掲載されます[1]。
KMIでは今後さらに、実験を記述しうる新しい物理法則を求めて、複合ヒッグス模型の研究を押進めていきます。
[1] “Light composite scalar in twelve-flavor QCD on the lattice”, LatKMI collaboration, arXiv:1305.6006, Phys.Rev.Lett. 掲載予定.
素粒子宇宙起源研究所広報委員会