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格子QCDによるクォーク間ポテンシャルの精密化

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KMI Theory Seminar
2011-10-12 16:30
Shoichi Sasaki
KMI Science Symposia (ES635)

これまでクォーク間ポテンシャルとしては、Wilsonループを使った、つまりクォーク質量無限大の極限においてはよく研究されてきた。クォーク質量が有限な効果については摂動論的にクォーク質量の逆数を展開パラメーターとしてその効果が見積もられてきた。しかし、そのような展開はチャームクォークの質量近傍では破綻していると考えられ、チャームクォークの従うクォーク間ポテンシャルは完全に理解されているとは言い難い状況である。そのような状況の中で T. Kawanai and S. Sasaki, Phys. Rev. Lett.107 (2011) 091601. において、格子QCDによる核力ポテンシャルの導出で成功した:二体ハドロン間のBethe-Salpeter振幅からハドロン間ポテンシャルを導出する定式化をクォーク-反クォーク系に応用することで、有限クォーク質量でのクォーク間ポテンシャルの導出に成功した。さらにクォーク質量無限大においてWilsonループの結果と自然に繋がることもクェンチ近似の格子QCD数値計算によってそれを示した。この新しい方法ではスピン-スピン相互作用も精度よく計算でき、スピン-スピン以外のLSやテンソル相互作用項なども含めたスピン依存の相互作用の導出も可能である。このことから、QCDの第一原理計算よりチャーモニウムにおけるクォークポテンシャル模型の精密化の道が拓いた。現在、PACS-CSによって公開されている2+1フレーバーのゲージ配位(π中間子が156MeV)を活用して、チャーモニウムにおけるクォークポテンシャル模型の精密化を試みている。