基礎理論研究センター 【名古屋大学 素粒子宇宙起源研究機構(KMI)】

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宇宙理論部門

この部門では素粒子理論研究者と宇宙理論研究者が協力し、宇宙暗黒物質、暗黒エネルギー、宇宙バリオン数起源、ビッグバン元素合成やインフレーション模型など、宇宙理論と素粒子論の融合研究を推進しています。

近年急速に宇宙の観測技術が進歩し、宇宙論も観測との精密な比較ができる時代となっています。その結果宇宙論の研究は、豊富な観測データに裏打ちされた定量科学としての側面が強くなってきています。当部門では、この側面を重視し、最新の観測データに基づいた理論研究を行うとともに、その背後にある素粒子理論を明らかにしようとしています。

素粒子論の目標は素粒子とその相互作用の統一的な理解にあり、そのような統一理論の候補として、超弦理論のような4次元より大きな時空の理論が考えられています。自然界の基本的な相互作用は、電磁相互作用、弱い相互作用、強い相互作用、重力相互作用の4つですが、その中で最初の3つの相互作用を場の量子論で記述できるのに対し、重力だけは非常に異質で、対応する場の量子論が分かっておりません。その量子論の候補としてほぼ唯一知られているものが超弦理論です。実際に重力が超弦理論のような高次元の理論によって記述されるとすると、ブラックホールや初期宇宙のように重力が強い場合の様相は一般相対論で記述されるものとは特に異なるはずです。また、最近発見された現在の宇宙の加速膨張も素粒子理論の立場ではかなり異常な現象で、この研究からも一般相対性理論を超えた重力理論の手がかりが得られるものと期待しています。

我々が住んでいるこの宇宙の構造は非常に多様であり、緻密に構成された階層世界となっています。宇宙のあらゆる構造は、宇宙創世の時から現在に至るまでの約140億年にもおよぶ時間の流れの中で形成されてきました。この宇宙構造がどのようにできてきたのかを理論的に解明することにより、宇宙の本質に迫るとともにその背後に潜む重力理論や素粒子理論を明らかにしようとしています。

観測データに基づいて定量的に宇宙全体の姿を明らかにしようとする研究分野は観測的宇宙論と呼ばれます。ここでも実際の観測データを説明するための理論的研究が重要な役割を果たしています。観測量を予言したり、宇宙論に最適な観測とはどのようなものなのかを理論的に導き出したりします。並列計算機を使った大規模なモンテカルロシミュレーションによる統計手法などを用いて、観測データから、ニュートリノ質量やダークエネルギーの性質を明らかにしたり、初期宇宙モデルに制限を与える研究などを進める一方、観測プロジェクトへ理論的立場から参加しています。

また、数値シミュレーションは「数値実験」として重要な役割を担っており、特に、宇宙の構造形成の研究に大きな役割を果たしてきています。宇宙大規模構造の進化のより深い理解とともに一般相対性理論を超えた重力理論の手がかりが得られるものと期待しています。

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