こんにちは。名古屋大学素粒子宇宙起源研究所&大学院多元数理科学研究科兼任助教の大須賀けん斗です。かなり長い肩書きですが、ざっくりいうと現実世界でも頭の中でも物理と数学の間を行ったり来たりしている研究者です。今回は私が研究者になるまでに経験した大きな決断の一つについて触れることで、研究者を目指している子供たちやその親御様の参考に少しでもなればと思います。
私の人生の転機は、海外の大学院へ留学すると決めたことだと思います。高校3年生のころから数学と物理とその研究者に興味を持ち始めましたが、経済的にそこまで恵まれていなかったこともあり、高校卒業後は地元の静岡大学に進学しました。また、その後大学院に進学する余裕もないという状況だったので、研究者を目指すということは現実的ではありませんでした。学生ローンという手段もなかったわけではありませんが、当時の僕に数百万の借金をしてでも大学院へ行く勇気はありませんでした。
卒業後は地元で就職することになるのかな、とぼんやり考えていた大学2年生の終わり頃、「海外では給料をもらいながら大学院に行けるらしい」という情報をどこかで見つけました。日本では考えられないような高待遇に最初はガセネタかと疑いましたが、いろいろ調べるとどうやら本当だとわかり、自分が大学院に行き研究者になるにはこの手段しかないと感じました。良くも悪くも他に選択肢がなかったため、特に迷うこともなく、決断に関しては誰にも相談もしませんでした。親には海外の大学院を目指すということと留学に関して経済的援助は必要ないことを伝えました。
その後は一つひとつ目標をクリアしていくだけでした。僕は飛び抜けて優秀な学生・研究者というわけではなかったので現在にたどり着くまでにかなり苦労したり、辛い経験をしたりもしましたが、まあなんとかなりました。苦しい面は話しても仕方がないので良かったことを話すと、例えば僕のアルバータ大学での指導教官はDon Pageさんという方です。ブラックホールや重力理論で世界的に著名な方で、そんな方に指導していただけたのは良い経験となりました。おまけですが、Donの指導教官は車椅子の物理学者で有名だったStephen Hawkingさんなので、学術的に僕はHawkingさんの孫ということになります。
また僕は博士課程在籍時に数学と物理の両方に指導教官を持っていて二つの研究を同時に行っていました。数学の指導教官はVincent Bouchardさんで、若く活気がある研究者です。彼の影響を大きく受けて、現在の研究は物理に近い数学の研究を行っています。アルバータ大学は経済的支援だけでなく修士をスキップさせてくれたり物理と数学の両方の研究をさせてくれたり、かなり柔軟に対応してくれたのでとても感謝しています。こういう経験ができたことも海外の大学(少なくともアルバータ大学)に行ってよかったことだと思います。
僕は合計8年半海外で生活していました。その中で最も印象に残っていることは卒業式の際に両親をカナダへ招待してあげたことですね。DonもVincentも卒業式に来てくれて友達にもたくさん祝っていただきました。母にとっては初めてのパスポート、飛行機に乗るのも人生2度目という状況でしたが、無事カナダを満喫していきました。良い親孝行になったのではないかと自分で思っています。
こんなところでしょうか。大学生の時に海外の大学院を目指すと決断した後、僕の人生は大きく変わりました。その後はお世話になった指導教官や友人、同僚の助けもあり、現在も楽しく研究生活が送れています。KMIを訪れた際は声かけてみてください。
- サムネイル写真説明
- アルバータ大学での博士号学位授与式にて。左から、母、Page 教授、私、Bouchard 教授、父


