現象解析研究センター 【名古屋大学 素粒子宇宙起源研究機構(KMI)】

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KMI、BelleII Grid参加1週間で第3極へ

素粒子宇宙起源研究機構(KMI)現象解析研究センタータウレプトンデータ解析室のGrid Sytem(※1)が2013年8月10日にBelle II実験(※2)のBelle II MC campaign 2013(※3)に初参加を果たしました。参加1週間で高エネルギー加速器研究機構、ドイツ・カールスルーエ研究機構のGrid systemに次ぐ第3位のモンテカルロ疑似データ(※4)生産量を達成しました。
このように素粒子宇宙起源研究機構はBelle II実験コンピューティング部門でも世界にその存在感を示しております。

※1 Grid system
膨大な計算能力、巨大な記憶容量が必要になった時に、1台のコンピュータ、1か所のコンピュータセンターに頼るのではなく、世界に分散するコンピュータを結集して計算処理やデータの記憶にあたるシステムのことです。LHC実験などではすでに導入されていますが、日本の研究者が主導するGrid systemはBelle II実験が初となります。
本記事で紹介されたGrid systemの詳細はこちらへ。

※2 Belle II実験
電子陽電子衝突型非対称加速器を用いてB中間子を始めとして、D中間子、τレプトンなどを、先行したBelle実験の50倍(50ab-1)生成し、その精密測定により新しい物理へと迫る素粒子実験のことです。その性質からB factory実験とも呼ばれます。2015年実験開始予定で、現在は準備段階にあります。22カ国約500名の研究者が実験に参加しています。

※3 Belle II MC campaign 2013
Grid system全体で、モンテカルロ法により疑似データ(※4参照)を大量に生成し、Grid system全体での問題点を洗い出す作業のことです。Belle II MC campaign 2013では約3億事象のシミュレーションを行う予定。大量に生成することで、各地点間のネットワーク通信の問題や、各地点の混み具合によって起きる問題などを見つけることができ、さらには問題が起きた時の対処法を検討することができます。さらにこのキャンペーンにより生成された疑似データを用いて、実際の実験が開始された時の実験精度やデータ解析上の問題点を調べます。

※4 モンテカルロ疑似データ
実験データをシミュレーションにより再現した人工の疑似データのことです。実験データは結果しかわかりませんが、疑似データはシミュレーションした過程が全てわかっているので何がどうなってこのようなデータになったのかが理解できるので、実験データをよりよく理解するために役立ちます。また、実際の実験が始まる前でも疑似データは生成できるので、前もって実験がどのような感度を持つことができるのかなど先行研究を可能にします。シミュレーションの方法は乱数を用いたモンテカルロ法と呼ばれる方法が一般的です。


2013年8月12日~19日の計算量を表すグラフ。高エネルギー加速器研究機構(青紫)、ドイツ・カールスルーエ研究機構(赤紫)に続きKMIは第3位(象牙色)につけています。ドイツ・DESY研究機構(オレンジ)や韓国・KISTI研究機構(明るい緑)も油断できないライバルです。縦軸はHepSpec06という高エネルギー実験に特化した計算能力を表す単位です。Grid systemは世界各国から様々な種類のCPUやメモリを搭載したコンピュータが参加していますから、計算能力を表す単位を用いて公平に計算量を表します。
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