現象解析研究センター 【名古屋大学 素粒子宇宙起源研究機構(KMI)】

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時空構造起源部門

アインシュタインの相対性理論が予言した理論上のモンスター、「ブラックホール(BH)」。光をも飲み込む、文字通り宇宙一の暗黒天体です。その強大な重力により、その周りの時空構造は極端に歪められ、地球上では実現不可能な興味深い物理現象が現れます。その為、BHは一般相対性理論をはじめとする基礎物理法則を検証する為の、極めて重要な天然の実験場です。一方、BHは物質を飲み込むだけでなく、その周辺からは、ジェットと呼ばれる高速の噴出流がしばしば観測されます。その噴出速度は時に光速の90%を超えるため、宇宙における粒子加速源の候補として注目されています。また、以前から知られていた恒星質量BH・大質量BHに加え、最近は中質量BHという新種族候補が見つかり、BHの成長が明らかになりつつあります。更に、BHの成長(進化)が銀河進化と密接に関わっている事が明らかとなり、137億年という宇宙の成長史を理解する上でも、最も重要な研究対象の一つであると考えられています。

我々「時空構造起源部門」では、観測・理論の両面からこの暗黒天体の素顔を暴く研究を行っています。観測的な側面に於いては、飛翔体によるX線観測を軸とし、BHに飲み込まれる直前の物質が発するX線を捕らえます。X線強度変動・スペクトル情報から、BHのスピン・BH近傍物質の運動状態・BHへの物質流入量といった、時空構造・BHの成長メカニズム解明に直結する物理量の導出を行ないます。更に、X線に加え電波・γ線といった他の波長域の観測データも組み合わせる事で、BH周辺で実現される粒子加速メカニズムの解明を目指します。これらに加え、理論的なアプローチとして、BHからのエネルギー抽出の基本的メカニズムの検討(ペンローズ過程,superradiance,ブラックホール磁気圏の構造)を行い、高エネルギー天体現象のエンジンとしてのBHの理解を深めます。また、BH周辺時空の可視化、X線源の強度変動ならびにスペクトルに対する理論的モデルを構築することで、高エネルギー天体現象の理論的側面からの理解を目指します。現実の天体現象と少し離れたテーマとして、流体系を用いた擬似的BHの研究も行なっており、BH蒸発現象を実験室内で検証する可能性を探っています。

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